遺産分割における不動産の評価方法!揉めたときの対処法も解説
遺産分割をするにあたり、相続財産の評価額を算定しなければなりません。しかし、不動産のように評価額を決めるのが難しい財産もあります。そこでこの記事では、遺産分割における不動産の評価方法について説明します。この記事を参考に評価方法の種類やポイントなどを理解しましょう。
遺産分割と相続税申告で不動産の評価方法は異なる
相続財産に不動産が含まれていた場合は、その不動産に関する評価が必要です。ただし、この評価方法は遺産分割のために行うのか、相続税申告のために行うのかで異なります。そこでまずは遺産分割の場合と相続税申告の場合それぞれで、どのように不動産を評価すればよいのか確認しましょう。
1.遺産分割の場合
遺産分割の場合は、相続人全員が合意をしていればどのような評価方法でも問題ありません。たとえば、土地Aと土地Bをそれぞれ「1個」とし、長男・次男が1個ずつ相続するというケースも考えられます。しかし、一般的には以下のいずれかを参考にすることが多いでしょう。
- 公示地価
- 実勢価格
- 相続税評価額
- 固定資産税評価額
繰り返しになりますが、相続人全員が合意していれば、上記のどの評価方法でも問題ありません。このうち特に「実勢価格」で評価することが多いでしょう。
2.相続税申告の場合
相続税申告をする際は、国税庁が定める「財産評価基本通達」というルールに従って不動産を評価する必要があります。このときの評価は土地と建物に分けて、以下のようにして行います。
- 土地:路線価方式または倍率方式を用いて計算する
- 建物:固定資産税評価額に1.0倍を乗じて計算する
なお、遺産分割の評価方法で紹介した「相続税評価額」は、上記の方法によって算定した評価額となります。
遺産分割における不動産の評価額の求め方
ここでは、遺産分割における不動産の評価額の求め方を詳しく説明します。
1.公示地価による方法
公示地価とは、地価公示法に基づき国土交通省の地下鑑定委員会が官報で公表している土地の価格のことです。毎年、1月1日時点の評価額が、3月頃に発表されます。公示地価は国土交通省が運営している「不動産情報ライブラリ」で確認することが可能です。一般的に、ほかの不動産の評価方法に比べると評価額は高くなる傾向があります。
2.実勢価格による方法
実勢価格とはいわゆる「時価」のことで、不動産売買をする際に用いられる価格のことです。実勢価格は、前項で紹介した「不動産情報ライブラリ」の取引価格・成約価格を参考にほか、近隣の不動産と比較したり、過去の類似物件の売却事例を調査したりすることで求められます。一般的には公示地価と同じくらいとされていますが、実際は公示価格より高くなることも低くなることもあります。
3.相続税評価額による方法
相続税評価額とは、相続税や相続税を申告する際に用いられる価格のことです。前述したとおり、土地の評価方法には路線価方式と倍率方式の2種類があります。
- 路線価方式:「路線価×各種補正率×地積」で算出する方法
- 倍率方式:「固定資産税評価額×倍率」で算出する方法
路線価方式と倍率方式の基準については、国税庁が運営している「財産評価基準書 路線価・評価倍率表」で確認することが可能です。一般的に相続税評価額は公示地価の80%程度とされています。
4.固定資産税評価額による方法
固定資産税評価額とは、地方税法に従って市区町村が定める、固定資産税を評価する際の価格のことです。固定資産税評価額は、被相続人が残していた課税明細書を見たり、市区町村に固定資産評価証明書を発行してもらったり、固定資産課税台帳を閲覧したりすることで確認できます。一般的に固定資産税評価額は公示地価の70%程度とされています。
相続不動産の評価額で揉めたときの対処法
相続する不動産の評価額・評価方法で揉めた場合は以下の対応をとることをおすすめします。
- 不動産鑑定士に評価を依頼する
- 遺産分割調停・審判を申し立てる
ここでは、相続不動産の評価額・評価方法で揉めたときの対処法について説明します。
1.不動産鑑定士に評価を依頼する
相続不動産の評価額・評価方法で揉めた場合は、不動産鑑定士に評価を依頼するという対応が考えられます。不動産鑑定士の場合は、不動産の鑑定評価に関する法律に基づいて不動産の評価をしてくれます。そのため、正確な不動産の価格を調べることが可能です。なお、不動産鑑定士による評価には数十万円の費用がかかるため、相続人全員で合意をしたうえで行うほうがよいでしょう。
2.遺産分割調停・審判を申し立てる
相続人同士での話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てるのもおすすめです。遺産分割調停では、裁判官や調停委員が双方の主張や事情などを確認したり、不動産の鑑定結果などを把握したりしてから、解決に向けたアドバイスや提案などをしてくれます。
調停が不成立となった場合、自動的に遺産分割審判へと移行します。遺産分割審判では、裁判官が提出された資料やそれぞれの主張などを確認し、その相続においてどのように遺産分割を行うのかの審判を下します。なお、不動産の評価額は不動産鑑定評価額を基準に決めることが多いでしょう。
相続不動産の評価方法で迷ったら弁護士に相談を
相続不動産の評価額を決める際は、公示地価、実勢価格、相続税評価額、固定資産税評価額などが参考になります。このうち一般的には実勢価格(時価)を参考にすることが多いでしょう。しかし、時価の求め方にもいくつか方法があり、この評価方法で揉めてしまうケースも少なくありません。
もし相続不動産の評価額・評価方法で揉めたら、相続問題が得意な弁護士に相談することをおすすめします。特に大野法律事務所であれば、宅地建物取引士の資格を有している弁護士が、不動産の評価に関するアドバイスを行うことが可能です。まずは当事務所まで、お気軽にご相談ください。