前妻の子どもに相続権はある?トラブル回避のために被相続人ができる5つの対策
前妻との間に子どもがいる場合、その子どもにも相続権は発生します。そのため、遺言を残すにしても、遺産分割協議をするにしても、その子どものことを考慮する必要があります。この記事では、前妻との間に子どもがいる場合の相続のポイントを中心に説明します。相続トラブルに発展する可能性が高いため、被相続人となる方は事前の対策に取り組むようにしましょう。
前妻との間の子どもにも相続権は発生する
前妻との間に子どもがいた場合、その子どもは第1順位の法定相続人となります(民法第887条第1項)。そもそも離婚とは夫婦関係を解消するための手続きであり、離婚したとしても親と子の関係が解消されるわけではありません。そのため、前妻との間の子どもにも相続権が発生するのです。
前妻との間の子どもの法定相続分は、民法第900条に規定されているとおりです。被相続人に配偶者がいる場合は、配偶者と前妻の子どもで2分の1ずつ分けます。また、前妻との子どもや現妻との子どもなど、子どもが複数名いる場合は、その人数に応じて相続分を等分することになります。
前妻との間に子どもがいる場合に多い相続トラブル
前妻との間に子どもがいる場合、以下のような相続トラブルが生じる可能性があります。
- 遺産相続の話し合いがまとまらない
- 前妻との間の子どもと連絡が取れない
- 前妻との間の子どもが相続手続きに協力してくれない
ここでは、前妻との間に子どもがいる場合に多い相続トラブルについて説明します。
1.遺産分割の話し合いがまとまらない
前妻との間に子どもがいる場合、遺産分割の話し合いが難航しやすい傾向があります。特に多いのが、現在の家族としては「知らない子どもに財産を渡したくない」、前妻の子どもとしては「少しでも多く財産を相続したい」という感情的な対立が起こるケースです。このように双方が感情面で対立してしまい譲歩できなくなると、当事者だけでの話し合いでは解決するのが難しくなります。
2.前妻との間の子どもと連絡が取れない
前妻との間に子どもがいる場合、そもそもその子どもと連絡が取れない可能性も高いです。遺産分割協議を行う場合は、全ての相続人で話し合わなければなりません。前妻との間の子どもに連絡が取れない場合は、当然話し合いを進めることができず、相続手続きを行うこともできないでしょう。
3.前妻との間の子どもが相続手続きに協力してくれない
前妻との間の子どもと連絡が取れたとしても、遺産分割協議などに協力してくれるかどうかはわかりません。「話し合いなんて面倒くさい」「親のことなんて思い出したくない」などの理由で協力してくれないケースもあります。このような場合も相続手続きを進めることができなくなるでしょう。
前妻との間に子どもがいる場合に被相続人ができる対策
前妻との間に子どもがいる場合、被相続人は生前に以下のような対策をしておくのがおすすめです。
- 遺言書を残しておく
- 生命保険を活用する
- 生前贈与を行っておく
- 前妻との間の子どもに相続放棄をしてもらう
- 前妻との間の子どもを相続人から排除する
ここでは、残される相続人のために被相続人ができる対策について説明します。
1.遺言書を残しておく
前妻との間に子どもがいる場合、遺言書を残しておくのがおすすめです。遺言書があれば相続人は遺産分割協議をすることなく、相続手続きを進めることができます(民法第902条)。そのため、前妻との子どもがいる場合に生じるトラブルの多くに対処することができるのです。
遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、自筆証書遺言という3種類があります。自筆証書遺言は作成と保管を自分で行う遺言(法務局で保管も可能)、公正証書遺言は公証役場で作成する遺言、秘密証書遺言は自分で作成し、その遺言書の存在を公証役場で証明してもらう遺言のことです。
いずれの遺言でも、前妻の子どもとの間に生じるトラブルを回避するのに役立ちます。しかし、内容に不備があったり、遺留分を侵害したりしている場合は、あとからトラブルになる可能性があるので注意が必要です。もし遺言書の内容に不安があるなら、弁護士に相談することをおすすめします。
遺言書の作成サポートは大野法律事務所にお任せください
大野法律事務所では、遺言書の作成サポートなどの生前対策に注力しています。被相続人の方のご希望に沿った遺言書になるようサポートするだけでなく、相続人や相続財産などからトラブルを予想しそれを回避できる遺言書のご提案もいたします。前妻との間に子どもがいる場合は、当事務所までご相談ください。
2.生命保険を活用する
生命保険を活用し、現妻や現妻との間の子どもに財産をわたすことも可能です。死亡保険金は受取人固有の財産として扱われるため、遺産分割協議を行わずに受け取ることができます。また、死亡保険金は原則として特別受益に該当しないため、受取人の方が相続で不利になることもありません。ただし、著しく不公平な死亡保険金は持ち戻しの対象になります(最高裁平成16年10月29日決定)。
3.生前贈与を行っておく
生前贈与とは、被相続人となる方が亡くなる前に行う贈与のことを指します。生前贈与は贈与者(被相続人)と受贈者(相続人)との間で交わされる契約であり、贈与後はその財産を受贈者のものにすることができます。つまり、相続財産の対象から外すことが可能です。なお、生前贈与を行う場合は贈与税、相続税の生前贈与加算、特別受益などに注意する必要があるでしょう。
4.前妻との間の子どもに相続放棄をしてもらう
前妻との間の子どもに相続放棄をしてもらうよう依頼する方法もあります。前妻との間の子どもが相続放棄をしてくれれば、その子どもを交えて相続手続きをする必要がなくなります。しかし、被相続人の存命中に相続放棄をさせることはできませんし、生前、約束していても相続人となる子どもが守るとも限りません。そのため、必ずしも有効な対処法とは言い切れないでしょう。
5.前妻との間の子どもを相続人から排除する
前妻との間の子どもに以下のような事由がある場合は、相続人から廃除できます(民法第892条)。
- 被相続人に対して虐待や重大な侮辱を加えたとき
- 推定相続人にその他の著しい非行があったとき
上記の事由がある場合、被相続人の方は家庭裁判所に対して「推定相続人の廃除」を申し立てることが可能です。そして、家庭裁判所に推定相続人の廃除が認めれば、当該相続人の相続権を失わせることができます。これにより現妻や現妻との間の子どもだけに遺産を相続させられます。
相続人に関する悩みがあれば弁護士に相談を
前妻との間の子どもにも、相続権は発生します。そして、前妻との間に子どもがいることが原因で相続トラブルに発展するということも珍しくありません。残される相続人の方のためにも、被相続人となる方は遺言書、生命保険、生前贈与などを活用して対策しておくのが望ましいでしょう。
離婚経験があり、ご自身が亡くなったあとの相続に不安がある場合は、弁護士に相談しておくのもおすすめです。大野法律事務所では生前対策にも注力しており、トラブルを回避できる遺言書の作成をサポートすることも可能です。まずはどのような悩みがあるかご相談いただけますと幸いです。