相続放棄とは?検討すべき4つのケースや手続きの具体的な流れ

通常、被相続人が亡くなったら、相続人はその財産を相続することになります。しかし、相続人は財産を相続しない「相続放棄」という選択をすることも可能です。この記事では、その相続放棄の基本について説明します。相続放棄が必要なケースや具体的な手続きの流れなども確認しましょう。

相続放棄とは?

相続放棄とは、被相続人の権利・義務を一切引き継がない手続きのことです。相続放棄をする際は家庭裁判所に相続放棄の申述をする必要があり、裁判所にその申述が受理されると、申述人は最初から相続人とならなかったものとして扱われます(民法第939条)。なお、相続放棄の場合は最初から相続人ではないとされるため、自分の子どもなどに相続権が移る「代襲相続」が発生しません。

相続放棄を検討したほうがよいケース

相続放棄を検討したほうがよい主なケースは、以下のとおりです。

  1. 明らかに借金が多い場合
  2. 連帯保証債務がある場合
  3. 相続したくない財産しかない場合
  4. ほかの相続人と関わりたくない場合

ここでは、相続人が相続放棄を検討したほうがよいケースについて説明します。

1.明らかに借金が多い場合

被相続人の財産よりも負債(借金)のほうが多い場合は、相続放棄をするほうが望ましいです。相続財産調査の際に、以下のような借金の有無・金額を確認しておきましょう。

  • 銀行や消費者金融などからの借入
  • クレジットカードやローンの残債
  • 公共料金や携帯料金などの滞納金
  • 税金や健康保険料の滞納金 など

上記のような借金があるにもかかわらず、そのまま相続をしてしまうと、相続人は被相続人の多額の借金を背負うことになります。相続財産を処分することで借金を完済できるなら問題ありません。しかし借金が残ってしまう場合は、自分の資産を返済に充てる必要があるでしょう。

2.連帯保証債務がある場合

被相続人が保証人・連帯保証人になっていた場合も、相続放棄を検討するほうがよいでしょう。相続人は、原則として被相続人の保証人・連帯保証人という立場を引き継ぎます。しかし、相続放棄をすることで、被相続人の保証人・連帯保証人という立場も放棄することが可能です。

3.相続したくない財産しかない場合

主な相続財産が空き家や山林などの場合(むしろ処分費用が発生する場合)も、相続放棄を検討するほうが望ましいです。このような財産は活用しにくい一方で、管理費用や固定資産税などは支払う必要があります。出費が増えて、管理の負担もあるため、相続放棄を検討するのがおすすめです。

4.ほかの相続人と関わりたくない場合

ほかの相続人との人間関係がよくない場合も、相続放棄を検討したほうがよいでしょう。相続放棄は相続人が単独でできますし、受理されたあとは遺産分割協議に参加する必要もありません。遺産分割に多くの時間と労力を割くくらいなら、相続放棄をしたほうがよい結果になることもあります。

相続放棄をする際の流れ

相続放棄をする際は、一般的には以下のような流れで行います。

  1. 必要書類を用意する
  2. 家庭裁判所に相続放棄の申述をする
  3. 回答書に必要事項を記載し返送する
  4. 家庭裁判所から相続放棄申述受理書が届く

ここでは、相続放棄をする際の流れについて説明します。

1.必要書類を用意する

相続放棄をする際は、以下のような書類が必要になります。

  • 相続放棄の申述書
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 相続放棄をする人(申述人)の戸籍謄本
  • 被相続人の死亡が記載されている戸籍謄本 など

必要書類は申述人の立場によって異なりますが、最低限、上記の書類を集める必要があります。このうち相続放棄の申述書は、「裁判所のウェブサイト」で入手することが可能です。申述書の記載例も掲載されているため、この記載例を参考に相続放棄の申述書を作成しましょう。

2.家庭裁判所に相続放棄の申述をする

必要書類を準備できたら、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に相続放棄の申述をしましょう。相続放棄ができるのは、相続の開始を知ったときから3か月以内です(民法第915条)。申述する際は、収入印紙(1通あたり800円)と連絡用の郵便切手が必要になります。

相続放棄の申述期限を過ぎてしまったら大野法律事務所に相談を!

通常、相続放棄の申述は、相続の開始を知ったときから3か月以内に行わなければなりません。しかし、この申述期限を過ぎた場合でも、相続放棄が認められるケースは多くあります。その際、弁護士によるサポートがあるほうが望ましいため、相続放棄が得意な大野法律事務所にご相談ください。

3.回答書に必要事項を記載し返送する

相続放棄の申述をすると、数日~2週間程度で家庭裁判所から照会書(回答書)が届きます。照会書は、本当に相続放棄をするか確認するための書類です。同封されている回答書に必要事項を記入したら、家庭裁判所の担当書記官に返送しましょう。なお、回答期限があるため注意してください。

4.家庭裁判所から相続放棄申述受理書が届く

照会書・回答書を返送すると、後日、家庭裁判所が審理を行い、問題がなければ相続放棄が受理されます。受理された場合は家庭裁判所から相続放棄申述受理書という書類が届きます。この通知書を受け取ったら、相続放棄は完了となります。なお、相続放棄をしたことを他人に証明する必要があるなら、相続放棄申述受理証明書の発行を受けるようにしましょう。

相続放棄を検討しているなら弁護士に相談しよう

相続放棄は、被相続人の権利・義務を一切引き継がない手続きです。特に明らかに借金が多い場合や価値のない財産しかない場合には、この相続放棄を検討するのがおすすめです。なお、相続放棄は相続の開始を知ったときから3か月以内と期限が決まっているため、早めに手続きを行いましょう。

相続放棄の申述は、相続人の方がひとりでも行えます。しかし、相続財産調査が必要だったり、期限が短かったりすることを考慮すると、専門家である弁護士に相談・依頼するほうが望ましいです。大野法律事務所でも相続放棄の手続きにご対応できますので、まずはお気軽にご相談ください。

 

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