法定相続分とは?指定相続分・具体的相続分との違いやケース別の相続割合など

相続人全員が話し合って遺産の分割をする場合、それぞれの相続人の割合は法定相続分に従って決めるのが基本です。しかし、法定相続分は法定相続人の構成によって異なります。そこでこの記事では法定相続分の意味、法定相続人になれる人、ケース別の相続割合などについて説明します。法定相続分について正しく理解し、相続トラブルを回避できるようになりましょう。

法定相続分とは?指定相続分や具体的相続分との違い

相続分には通常、以下の3つが挙げられます。

  • 法定相続分
  • 指定相続分
  • 具体的相続分

ここでは法定相続分の意味と、指定相続分や具体的相続分との違いについて説明します。

法定相続分は民法で定められた相続割合のこと

法定相続分とは、民法第900条に定められている法定相続人ごとの相続割合のことです。同条文には法定相続人が「配偶者と子どものケース」「配偶者と直系尊属(両親など)のケース」「配偶者と兄弟姉妹のケース」の3つについて、それぞれの相続割合の目安が規定されています。通常、遺産分割協議で相続財産を決める際には、この法定相続分を目安にすることが多くなっています。

指定相続分は遺言で定められた相続割合のこと

指定相続分とは、被相続人の遺言によって定められた相続割合のことです。民法第902条には「遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。」と規定されており、被相続人が自由に相続分を決められるようになっています。なお、指定相続分(遺言書の内容)がある場合は、法定相続分よりも優先されます。

具体的相続分は寄与分や特別受益を考慮した相続割合のこと

具体的相続分とは、法定相続分や指定相続分を基本とし、相続人の寄与分や特別受益を考慮した相続割合のことです。寄与分とは、相続人の財産の維持・増加に貢献した相続人が、通常より多くの財産を相続できる制度のことです。また、特別受益とは、被相続人から生前贈与・遺贈によって受け取った特別の援助のことを指します。これらを調整した相続分のことを具体的相続分といいます。

法定相続分を把握するのに欠かせない法定相続人とは?

法定相続分を理解するのにあたり、法定相続人の意味を把握しておく必要があります。法定相続人とは、配偶者、子ども、直系尊属、兄弟姉妹など、民法で定められている被相続人の遺産を相続する権利を持つ人のことです。ここでは、どのような人が法定相続人になるのかについて確認しましょう。

配偶者は常に法定相続人になる

被相続人の配偶者は、常に法定相続人になります(民法第890条)。ここでいう配偶者とは、法律上の配偶者に限定されます。内縁関係(事実婚)は含まれないので注意しましょう。

子どもや孫などは第1順位で法定相続人となる

被相続人に子どもがいる場合は、その子どもが第1順位の法定相続人になります(民法第887条第1項)。また、被相続人よりも先に子どもが死亡している場合などでは、代襲相続というルールによって「その子どもの子ども(=被相続人の孫)」が法定相続人となります(同条第2項)。なお、第1順位の場合は、孫が亡くなっている場合はひ孫というように無制限に代襲相続が起こります。

胎児は法定相続人になるか?

本来であれば、胎児は権利の主体になることはありません。しかし、相続の場合は例外的に、すでに生まれたものとみなされるため、法定相続人になることができます(民法第886条第1項)。ただし、死産の場合は法定相続人にはならないと決まっています(同条第2項)。

養子は法定相続人になるか?

被相続人の子どもには、実子だけでなく養子も含まれます(民法第809条)。たとえば、再婚相手の連れ子と養子縁組をした場合は、その連れ子も法定相続人になるのです。なお、あくまでも養子縁組をしている場合に限られるため、離婚を機に養子と離縁をした場合などは法定相続人になりません。

親や祖父母は第2順位で法定相続人になる

被相続人に子どもや孫などがいなくて、被相続人の親が存命の場合は、この方が第2順位の法定相続人となります(民法第889条第1項第1号)。両親が2人とも存命の場合は2人とも法定相続人となりますし、一方の方が亡くなっている場合はもう一方の方だけが法定相続人となります。なお、両親がともに亡くなっていても祖父母が存命の場合は、この祖父母が法定相続人として扱われます。

養親は法定相続人になるか?

被相続人の養親は、法定相続人になります。養子縁組をすると法律上の親子関係ができるため、養親は実親と同じように相続権を得ることが可能です。つまり、直系尊属に相続順位が回ってきたケースでは、最大で実親2人+養親2人の計4人が法定相続人となります(普通養子縁組の場合)。

配偶者の親(義親)は法定相続人になるか?

配偶者の親は、法定相続人にはなりません。第2順位の法定相続人となれるのは、被相続人の血族の直系尊属だけです。配偶者の両親は姻族であるため、法定相続人としては扱われません。もっとも被相続人と配偶者の親と養子縁組をしている場合は、前述のとおり法定相続人になれます。

兄弟姉妹や甥姪は第3順位で法定相続人になる

被相続人に子どもがいなくて、両親が亡くなっている場合は、被相続人の兄弟姉妹が第3順位の法定相続人となります(民法第889条第1項第2号)。また、代襲相続のルールがあるため、兄弟姉妹が亡くなっている場合はその子ども(被相続人の甥姪)が法定相続人になります。ただし、第1順位の場合と異なり、第3順位の場合は甥姪までの代襲相続しか認められていません。

相続人の具体的な法定相続分を4つのケースで解説

民法には、「配偶者と子ども」「配偶者と直系尊属」「配偶者と兄弟姉妹」という3つのケースに分けて法定相続分が規定されています。ここでは、さらに「配偶者だけ」のケースも加えて、それぞれの法定相続分について説明します。

1.配偶者だけの場合

法定相続人が配偶者だけの場合、配偶者は全ての財産を相続できます。3,000万円分の相続財産があった場合は、その3,000万円を全て配偶者が相続することになります。

2.配偶者と子どもの場合

法定相続人が配偶者と子どもの場合は、それぞれが2分の1ずつ相続することになります。相続財産が3,000万円の場合、配偶者は1,500万円、子どもは1,500万円ずつ相続します。なお、子どもが複数人いる場合は、2分の1の財産をその子どもの人数で等分します。

3.配偶者と親の場合

法定相続人が配偶者と親の場合は、配偶者が3分の2、親が3分の1を相続することになります。相続財産が3,000万円の場合、配偶者は2,000万円、親は1,000万円を相続します。また、両親がともに存命の場合は、父と母がそれぞれ2分の1ずつ相続することが可能です。

4.配偶者と兄弟姉妹の場合

法定相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1を相続します。相続財産が3,000万円の場合は、配偶者は2,250万円、兄弟姉妹は750万円を相続できます。兄弟姉妹が複数人いる場合も、4分の1の財産を兄弟姉妹の人数で等分することになります。

法定相続分に迷ったら弁護士に相談しよう

法定相続分とは、民法に規定されている法定相続人ごとの相続割合のことを指します。法定相続人になれるのは配偶者、子ども、親、兄弟姉妹などで、この相続人の構成によって法定相続分は変わります。法定相続分を知りたい場合は、法定相続人を調査し、当てはまるケースを確認しましょう。

また、相続人の調査や相続分の計算で困ったら、弁護士に相談することもおすすめします。特に寄与分や特別受益がある場合は、それらを踏まえて相続分を調整する必要があるので相談するほうが望ましいでしょう。大野法律事務所でもこのようなご相談に対応することが可能です。相続問題が得意な弁護士が対応しますので、まずはご自身の相続に関してご相談いただけますと幸いです

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