遺言執行者とは?2種類の指定方法や指定すべきケースなどを解説

遺言を作成するにあたって、遺言執行者が必要なのかどうか迷う人もいるでしょう。遺言執行者は必ずしも必要ではありませんが、指定しておくことで円滑に相続手続きが進むなどのメリットが期待できます。この記事では、そのような遺言執行者の基本について説明します。遺言執行者を指定する方法、指定すべきケース、遺言書を書くときのポイントなどについても確認しましょう。

遺言執行者とは?

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するための人を指します。遺言の内容は遺言者の死後に効力が生じるため、遺言者自身が手続きを行うことはできません。そこで遺言執行者を指定しておき、その人に遺言の内容を実現してもらいます。遺言執行者の主な業務内容は以下のとおりです。

  • 相続人に対する遺言執行の業務を開始したことの通知
  • 財産目録の作成と相続人に対する交付
  • その他遺言の内容の実現に必要な行為

なお、遺言者は遺言執行者を指定することができますが、必ずしも指定する必要はありません。相続人が手続きをしてくれるなら、遺言執行者を指定しなくてもよいでしょう。

遺言執行者の指定方法は2種類

遺言執行者の指定方法には、大きく以下の2種類があります。

  1. 遺言書で指定する
  2. 裁判所が指定する

ここでは、遺言執行者の指定方法について説明します。

1.遺言書で指定する

遺言執行者は、遺言書で指定することが可能です。本文中に「この遺言の実現のために、遺言執行者として次の者を指定する。」と記載し、遺言執行者の住所・氏名を書くことで、その人を遺言執行者にすることができます。なお、遺言執行者は1人でも複数人でも問題ありません(民法第1006条)。

2.裁判所が指定する

遺言書で指定されていない場合または指定された遺言執行者が亡くなっていた場合、相続人は家庭裁判所に対して遺言執行者の選任の申立てを行うことができます(民法第1010条)。家庭裁判所とやり取りをして、申立てが認められれば、遺言執行者が選任されることになります。

遺言書で遺言執行者を指定しておくべきケース

遺言執行者は必ずしも指定する必要はありません。しかし、一部の手続きに関しては、遺言執行者でなければ対応することができないという点に注意しましょう。ここでは、遺言執行者を指定しておくべきケースと、指定するのがおすすめのケースについて説明します。

1.子どもの認知をする場合

被相続人に非嫡出子がいる場合、遺言でその子どもを認知することができます。遺言で子どもの認知をする場合、遺言執行者が認知の届出を行わなければなりません(戸籍法第64条)。そのため、円滑に認知の手続きをするためにも、遺言書で遺言執行者を指定しておくのが望ましいです。

2.相続人の廃除をする場合

被相続人は、被相続人に対して虐待、重大な侮辱、その他非行を働いた推定相続人を、遺言書で廃除できます(民法第893条)。遺言書で推定相続人の廃除をする場合、遺言執行者が遅滞なく家庭裁判所に請求する必要があります。そのため、このケースでも遺言執行者を指定しておくべきでしょう。

3.そのほかのおすすめの場合

遺言執行者は、以下のようなケースでも指定しておくのが望ましいです。

  • 相続人に負担をかけたくない場合
  • 相続人同士の人間関係が険悪な場合
  • 相続人以外の第三者に遺贈をする場合 など

遺言執行者を指定した場合、その人が必要な相続手続きを行ってくれるため、相続人への負担を軽減できます。そのため、相続人が高齢だったり、仕事で忙しかったりする場合には、遺言執行者を指定しておくのが望ましいでしょう。また、相続人同士のトラブルを防止したい場合や、被相続人の意思を尊重してほしい場合も、遺言執行者を指定しておくのがおすすめです。

遺言書で遺言執行者を指定する際のポイント

遺言書で遺言執行者を指定する際のポイントは以下のとおりです。

  1. 弁護士などに依頼することができる
  2. 報酬額は遺産の1~3%程度を目安とする
  3. 依頼内容や復任権などについても記載する

ここでは、遺言書で遺言執行者を指定する際に知っておくべきポイントを説明します。

1.弁護士などに依頼することができる

遺言執行者は、未成年者または破産者でなければ誰でもなることができます(民法第1009条)。そのため、弁護士などの専門家に依頼することも可能です。弁護士であれば法律に基づき遺言を執行することができますし、遺言の執行を妨害された場合には適切な対応をとってくれます。遺言執行者を指定する場合は、相続問題が得意な弁護士に依頼することをおすすめします。

2.報酬額は遺産の1~3%程度を目安とする

遺言執行者を指定した場合は、報酬を支払うことが一般的です。相続人などを遺言執行者に指定した場合は、無報酬とすることもあります。しかし、弁護士などに依頼した場合は、通常、遺産総額の1~3%程度を報酬額とすることが多いです。遺言執行者に報酬を支払う場合は、遺言の中で報酬金額や支払方法などを記載しておくとよいでしょう。

3.依頼内容や復任権などについても記載する

遺言書で遺言執行者を指定する場合、最低限「遺言執行者として○○を指定する。」と記載すれば問題はありません。しかし、同時に「次の権限を授与する」などと書き、遺言執行者に依頼する業務内容を記載したほうが、実際の手続きが円滑になるケースが多いです。

また、「本遺言の執行に必要な場合に代理人を選任し、その任務を行わせることができる」など、復任権に関する項目を設けておくほうが望ましいです。これにより万が一、遺言執行者に指定された人が相続手続きを行えない場合でも、弁護士などの専門家に依頼して相続を進めることができます。

遺言執行者のことで悩んだら弁護士に相談を

遺言書を残す場合、その遺言の内容を実現するための遺言執行者についても指定しておくのが望ましいです。遺言執行者を指定しておくことで、実際に相続が始まってからも円滑に手続きを進められます。遺言書を作成する際には、遺言執行者になってくれそうな人を探して相談しておきましょう。

身近に遺言執行者になれる人がいない場合や、家族に負担をかけたくない場合は、遺言執行者を弁護士に依頼するのもおすすめです。弁護士であれば法律をよく理解しているため、迅速に遺言内容を実現してくれるでしょう。遺言執行者に関することも大野法律事務所までお気軽にご相談ください。

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