遺言書の検認とは?検認が必要な遺言書の種類や検認手続きの流れなど
自宅などで遺言書を発見した際は、家庭裁判所で「検認」という手続きを受ける必要があります。しかし、どのように検認を受ければよいのかわからずに悩んでいる方もいるでしょう。そこでこの記事では、遺言書を発見した際に必要になる検認について詳しく説明します。検認が必要になる遺言書の種類や検認手続きの流れについても確認しましょう。
遺言書の検認とは?
遺言書の検認とは、家庭裁判所で遺言書を開封し、その時点の遺言書の内容を明確にすることで、将来の偽造・変造を防止する手続きのことです(民法第1004条)。また、ほかの相続人が遺言書の存在も知る機会にもなります。なお、検認は必ず必要な手続きです。検認を経ずに遺言書を開封してしまった場合は、5万円以下の過料を科される可能性があるでしょう(民法第1005条)。
検認が必要になる遺言書の種類
検認が必要になる遺言書は、以下の2種類です。
- 自筆証書遺言
- 秘密証書遺言
ここでは、検認が必要になる遺言書の種類について説明します。
1.自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、被相続人が自分で作成し、自身で保管している遺言書のことです。一般的には自宅で保管されていることが多く、机の引き出し、金庫の中、仏壇や神棚などがよくある保管場所となっています。自宅の中で遺言書を見つけた場合は、基本的には自筆証書遺言と考えてよいでしょう。
自筆証書遺言書保管制度を利用している場合は不要
2020年7月10日より法務局による自筆証書遺言書保管制度が開始されました。これは法務局で自筆証書遺言を保管してくれる制度で、相続開始後に検認を受けずに相続を進められるメリットがあります(法務局における遺言書の保管等に関する法律第11条)。また、この制度を利用している場合は被相続人の死後、特定の人に対して遺言書が保管されている旨の通知があります。
2.秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、被相続人が自分で作成し、封筒に本人・公証人・証人2名が署名・押印をしている遺言書のことです。封筒の裏側に「公証人」「証人」などの記載がある場合は、秘密証書遺言といえます。この秘密証書遺言を見つけた場合も、家庭裁判所で検認を受ける必要があります。
遺言書の検認を受ける際の流れ
自筆証書遺言や秘密証書遺言を見つけたら、以下の手順で検認を受けます。
- 必要書類を用意する
- 家庭裁判所に遺言書の検認の申立てをする
- 検認期日になったら家庭裁判所に行き検認に立ち会う
ここでは、遺言書の検認を受ける際の流れについて説明します。
1.必要書類を用意する
遺言書の検認を受ける際には、以下の書類が必要になります。
- 遺言書の検認の申立書
- 遺言者の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の子どもの出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本(子どもが亡くなっている場合)
遺言書の検認の申立書は「裁判所のウェブサイト」で入手できます。記入例も一緒にあるのでそちらを参考にしながら、申立書を作成するとよいでしょう。また、被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本と相続人全員の戸籍謄本が必要になるため、早めにこれらの書類を集めておきましょう。
2.家庭裁判所に遺言書の検認の申立てをする
必要書類を用意できたら、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、遺言書の検認の申立てをします。申立ての際は、遺言書1通あたり800円(収入印紙)と連絡用の郵便切手代が必要です。そして、申立てを受理した家庭裁判所は、検認期日を決定し、ほかの相続人に通知します。
3.検認期日になったら家庭裁判所に行き検認に立ち会う
検認期日になったら、家庭裁判所で検認が行われます。検認当日は遺言書と印鑑、裁判所から指示されたものを持参してください。検認自体は10分程度で完了し、その後は遺言書を返却され、検認済証明書が発行されます。検認済証明書は各種手続きに欠かせないため、忘れずに受け取りましょう。
遺言書の検認に関する注意点
遺言書の検認をするにあたり、以下の注意点を確認しておきましょう。
- 検認を受けないと過料を科される
- 検認期日は申立日の1~2か月後となる
- 申立人は必ず検認に立ち会う必要がある
- 検認は遺言書の有効・無効を争うものではない
ここでは、遺言書の検認に関する注意点について説明します。
1.検認を受けないと過料を科される
自筆証書遺言(自筆証書遺言書保管制度を利用していないもの)と秘密証書遺言を発見した場合は必ず家庭裁判所で検認を受ける必要があります。検認をせずに遺言書を執行したり、開封したりした場合は5万円以下の過料となる可能性があります(民法第1005条)。なお、万が一開封してしまった場合でも、遺言書が直ちに無効になるわけではないため、必ず検認を受けるようにしてください。
2.検認期日は申立日の1~2か月後になる
裁判所によって異なりますが、検認期日は申立日から1~2か月後となることが多いです。即日で検認手続が行われることはないので、スケジュールには余裕を持たせておきましょう。特に、相続放棄や相続税申告などのように、期限が決まっている相続手続きも多くあるので注意してください。
3.申立人は必ず検認に立ち会う必要がある
遺言書の検認の申立人は、遺言書を持参する必要があるため、必ず検認に立ち会わなければなりません。万が一、検認を欠席すると遺言書の提出を怠ったとして、5万円以下の過料を科される可能性があります。なお、そのほかの相続人は出席するかどうかを自由に決められます。
4.検認は遺言書の有効・無効を争うものではない
遺言書の検認の目的は、「検認後の遺言書の偽造・変造を防止すること」と「相続人全員に遺言書の存在を知らせること」です。そのため、遺言書が有効か無効かを争うものではありません。遺言書の効力を争う場合は、検認を終えたあとに遺言書無効確認調停・訴訟を行うようにしてください。
自宅などで遺言書を見つけたら検認手続きを忘れずに
自宅などで遺言書を発見したら、自筆証書遺言や秘密証書遺言のいずれかと考えられます。これらは家庭裁判所で検認を受ける必要があるため、早めに検認の手続きを進めましょう。万が一、開封してしまうと、5万円以下の過料を科される可能性があるので注意してください。
遺言書の検認の手続きは、相続人の方でも行えます。しかし、被相続人の方の戸籍を集めたり、申立書を作成したりするのは時間がかかり、負担も大きいです。そのため、弁護士に相談・依頼するのもおすすめです。大野法律事務所でも検認のサポートができますので、まずはお気軽にご相談ください。