遺言書の種類とは?3種類の遺言書のメリット・デメリットを解説
自分が亡くなったときの相続に備えて、遺言書の作成を検討している方もいるでしょう。しかし、遺言書の作成方法を調べていると、いくつか種類があり、どれにすればよいのか迷ってしまうこともあります。この記事では自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言について詳しく説明します。それぞれのメリット・デメリットも説明しますので、遺言書の種類を決める際の参考にしてください。
遺言は大きく分けて2種類の方式がある
遺言の方式は、大きく以下の2種類に分けられます。
- 普通方式遺言
- 特別方式遺言
ここでは、遺言の2種類の方式について説明します。
普通方式遺言
普通方式遺言とは、民法第967条で規定された原則的な遺言の方式です。普通方式遺言には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類が認められており、これ以外での遺言は後述する特別方式遺言を除いて認められません。また、それぞれの遺言にも厳格なルールが設けられています。
特別方式遺言
特別方式遺言とは、民法第967条の但し書きで規定されている例外的な遺言の方式です。特別方式遺言には、危急時に用いられる一般危急時遺言と難船危急時遺言、隔絶地で用いられる一般隔絶地遺言と船舶隔絶地遺言の計4種類があります。この特別方式遺言が使われることは滅多にありません。
遺言書の種類1.自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、被相続人が日付や本文、氏名などを自筆し、押印をして作成する遺言書のことです(民法第968条)。また、遺言書の保管は自分で行いますが、2020年7月10日より自筆証書遺言書保管制度が開始され法務局で保管できるようになりました。普通方式遺言の中では、最もよく使われている遺言書でしょう。
メリット
自筆証書遺言のメリットは、以下のとおりです。
- いつでも作成することができる
- 特別な費用を払うことなく無料で作れる
- 遺言書の撤回や修正なども簡単にできる
- 遺言者の存在を特定の人に教えてくれる(自筆証書遺言書保管制度を利用した場合)
自筆証書遺言のメリットは、その手軽さといえます。紙とペンさえあればいつでもどこでも作ることができ、一度作った遺言書の撤回や修正なども簡単に行うことができます。また、自筆証書遺言書保管制度が始まったことで、従来に比べ遺言書の保管や発見などが容易になりました。
デメリット
自筆証書遺言のデメリットは、以下のとおりです。
- 形式上の不備があり無効になりやすい
- 不公平な内容で相続問題になる可能性がある
- 財産目録以外は全て自筆しなければならない
- 死後に家庭裁判所で検認を受ける必要がある
- 遺言書を破棄、偽造、変造されるリスクがある
自筆証書遺言のデメリットは、自分ひとりで作れるために、形式上の不備が生じやすいというものです。たとえば、日付の記載や押印を忘れる、内容が不明瞭だったなどがあります。また、遺言書の内容が不公平な場合は、その内容を巡って相続人同士が争ってしまう可能性もあるでしょう。
遺言書の種類2.公正証書遺言
公正証書遺言とは、公遺言者が証役場で公証人と証人2人の前で遺言の内容を告げ、それを聞いた公証人が文章にまとめて作成する遺言書のことです(民法第969条)。遺言書の原本は公証役場に保管され、遺言者は正本と謄本を保管します。また、紛失してしまった場合でも公証役場で再発行することが可能です。
メリット
公正証書遺言のメリットは、以下のとおりです。
- 形式上の不備が生じにくい
- 遺言者本人が自筆して作る必要がない
- 遺言書の破棄、偽造、変造のリスクが低い
- 死後に家庭裁判所で検認を受ける必要がない
公正証書遺言の場合は、公証役場の公証人が作成してくれるため、形式上の不備が生じにくいというメリットがあります。また、公証役場で保管をしてくれるため、破棄、偽造、変造などのリスクも低いです。検認手続も不要なので、相続開始後、すぐに相続手続きを進めることができます。
デメリット
公正証書遺言のデメリットは、以下のとおりです。
- 費用がかかる(最低5,000円)
- 遺言書を作成するのに時間がかかる
- 自分で証人を2人用意する必要がある
公正証書遺言を作成する際は、公証人手数料を支払う必要があります。この手数料は財産の価額によって異なりますが、通常は2万~3万円程度になることが多いです。また、公証役場の予約に時間がかかったり、証人を2人用意したりする必要があり、負担が大きい点がデメリットといえます。
遺言書の種類3.秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、遺言者本人が遺言書を作成し、その存在を公正証書の手続きで証明した遺言書のことです(民法第970条)。具体的には、遺言書を封筒に入れてから封印し、それを公証役場に持参して公証人と証人2人の前で自分が作成したもので間違いないことを告げて作ります。
メリット
秘密証書遺言のメリットは、以下のとおりです。
- 遺言の内容を秘密にしておける
- 自筆する必要がないため負担が少ない
- 公正証書遺言に比べると費用は安く抑えられる
秘密証書遺言の最大のメリットは、遺言の内容を秘密にできる点です。公正証書遺言と異なり、証人の前で遺言の内容を確認されないため、その内容を秘密のままにしておけます。また、自筆証書遺言と異なり、本文はパソコンや代筆などでも作れるという点もメリットといえます。
デメリット
秘密証書遺言のデメリットは、以下のとおりです。
- 不公平な内容で相続問題になる可能性がある
- 費用がかかる(11,000円)
- 自分で証人を2人用意する必要がある
- 死後に家庭裁判所で検認を受ける必要がある
秘密証書遺言の場合は、その存在こそ証明できますが、内容は遺言者本人が書く必要があります。そのため、不公平な相続内容になってしまう可能性があるでしょう。また、作成するのに費用や手間がかかったり、死後に検認手続が必要になったりする点が、秘密証書遺言のデメリットといえます。
遺言書の種類や内容で迷ったら弁護士に相談を
一般的な遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。それぞれにメリットとデメリットがあるので、これらを理解してどの遺言書にするか決めるとよいでしょう。
大野法律事務所では、相続問題が得意な弁護士がご依頼者様の希望・条件などに合わせて遺言書を提案させていただきます。また、相続トラブルを回避できるよう遺言書の作成をサポートいたします。遺言書の種類に迷ったり、内容に悩んでいたりしたら、当事務所までお気軽にご相談ください。