事業承継とは?代表的な3つの種類と弁護士の役割を中心に解説
現在、事業を行っており、後継者に経営権を譲ろうと考えている人もいるでしょう。このように現在の経営者から後継者に経営権を引き継ぐことを事業承継といいます。この記事では、事業承継について詳しく説明します。また、事業承継における弁護士の役割や料金体系についても解説します。
事業承継とは?
事業承継とは、会社(事業)を後継者に引き継ぐことです。具体的にいうと、現在の経営者から後継者に対して株式(経営権)を譲渡することを指します。事業承継が行われなかった場合、その会社は廃業することになるでしょう。しかし、廃業は従業員や取引先などに影響するだけでなく、日本から重要な技術が失われることも意味するため、昨今は国も事業承継のサポートに力を入れています。
事業承継の代表的な種類
事業承継には、以下のような種類があります。
- 親族内承継
- 従業員承継
- M&A
ここでは、事業承継の代表的な種類について説明します。なお、事業承継の傾向については、帝国データバンクの「全国「後継者不在率」動向調査(2023年)」を参考にしています。
1.親族内承継
親族内承継とは、経営者の配偶者や子どもといった親族が、後継者となる事業承継の形態です。近年はほかの事業承継の割合も高まっていますが、現在でも多くの経営者が選択しています。後継者の教育期間を十分とれる、相続によって経営権を移転できるなどのメリットがあります。
2.従業員承継
従業員承継とは、自社の役員や従業員など、親族以外の人が後継者となる事業承継の形態です。近年は親族以外の人を後継者に選択する傾向が高まり、従業員承継を選択する経営者が増えています。後継者の選定がしやすい、承継後も経営方針の一貫性が保てるなどのメリットがあります。
3.M&A
M&Aとは日本語では「合併と買収」を意味し、親族や従業員以外の第三者に対して会社を売却する形態を指します。近年は、M&Aをはじめとする第三者承継の割合も高まっています。幅広い候補者の中から後継者を選択できる、経営者が売却利益を得られるなどのメリットがあります。
事業承継における弁護士の主な役割
事業承継には多くの専門家が関わります。このうち弁護士には以下のような役割があります。
- 事業承継全般に関してアドバイスをしてくれる
- 株式譲渡や相続対策などのサポートをしてくれる
- 従業員や取引先などとの関係構築をサポートしてくれる
ここでは、事業承継における弁護士の主な役割について説明します。
1.事業承継全般に関してアドバイスをしてくれる
事業承継をする際は、以下のような作業を行う必要があります。
- 後継者の選定・教育
- 事業承継の計画立案
- 社内外のリスク評価
- 各種契約書などの確認
- 従業員・取引先への対応
- 相続や遺留分に関する対策 など
事業承継をする際は、経営権だけでなく、経営資源や物的資源なども引き継ぐ必要があります。しかし、具体的に何をすればよいのかわからないという人は多いでしょう。事業承継が得意な弁護士であれば、上記のような事業承継に必要なことについて幅広くアドバイスをしてくれるでしょう。
2.株式譲渡や相続対策などのサポートをしてくれる
一般的に事業承継における株式譲渡のやり方には以下の3種類があります。
- 売買:後継者が自分のお金で会社の株式を購入する
- 贈与:現経営者が存命中に後継者に株式を譲渡する
- 相続:現経営者の死亡をきっかけに後継者に株式を譲渡させる
事業承継をするにあたって、最も重要な課題のひとつが円滑に後継者への株式譲渡を進められるかどうかです。この株式譲渡に問題が生じた場合、事業承継後の後継者の経営が安定しなくなる可能性があります。そこで弁護士が法律面からサポートすることで円滑に事業承継が行えるようになります。
たとえば、親族内承継の場合は、贈与か相続で株式譲渡が行われることが多いです。しかし、これらの手段の場合、ほかの相続人の遺留分を侵害する恐れがあります。そこで弁護士に依頼し、事業承継と並行して遺留分対策を進めてもらうことで、円滑に経営権を譲渡できる可能性が高まります。
3.従業員や取引先などとの関係構築をサポートしてくれる
弁護士は事業承継後に円滑な経営を行えるよう、関係者との関係構築をサポートしてくれます。
- 株主
- 従業員
- 取引先
- 金融機関 など
弁護士は法律の専門家であるとともに、交渉の専門家でもあります。そのため、従業員、取引先、金融機関などの関係者に対して事業承継の説明や必要な交渉にも対応してくれます。また、現経営者の個人保証を解除させたり、取引先との契約を整理したりするサポートもしてくれるでしょう。
事業承継を弁護士に相談・依頼したときの料金体系
事業承継に関する弁護士費用の料金体系には、以下のようなものがあります。
- 着手金・報酬金方式
- 時間制(タイムチャージ方式)
- 手数料方式
ここでは、事業承継を弁護士に相談・依頼したときの料金体系について説明します。
1.着手金・報酬金方式
着手金・報酬金方式は、弁護士に依頼したときに着手金を支払い、依頼が完了したときに報酬金を支払う料金体系のことを指します。着手金は事業承継の成否に関係なく支払いますが、報酬金は成功した場合にのみ支払います。また、着手金は一律であり、報酬金は売買代金に手数料を掛けることが多いです。なお、着手金や中間金などが一切ない完全成功報酬型を採用している事務所もあります。
2.時間制(タイムチャージ方式)
時間制(タイムチャージ方式)は、事業承継を完了するまでに要した時間に、弁護士の単価を掛けて計算する料金体系です。事業承継には多くのサポート時間を要するため、時間制を採用している法律事務所も少なくありません。なお、時間制の場合は予算の設定が難しいという欠点があります。
3.手数料方式
手数料方式は、事業計画書の作成、M&Aでの法務デューデリジェンスなど、依頼ごとに費用を支払う料金体系のことです。事業承継全体のサポートではなく、契約書の作成など一部の業務のみを依頼することができます。なお、依頼内容が複雑な場合は、料金が高額になることもあります。
事業承継に関する法律面のサポートは弁護士を頼ろう
事業承継は、現経営者から後継者に対して経営権を引き継ぐことを指します。その具体的な手段には売買、贈与、相続などがあり、弁護士による法律面のサポートも重要になります。特に相続による事業承継を行う場合は、遺留分対策などを含め弁護士によるサポートを受けるのが望ましいでしょう。
大野法律事務所では、相続問題が得意な弁護士が遺言書作成や遺留分対策などのサポートを行っております。事業承継に関するサポートが必要でしたら当事務所までお気軽にご相談ください。