相続に納得できないときに取るべき3つの対応!よくあるケース別の対処法も
遺言書がない場合や遺言書があっても相続人全員が同意した場合には、相続する財産などを相続人全員で話し合う遺産分割協議が行われます。しかし、その話し合った内容に納得ができないという場合もあるでしょう。この記事では、遺産分割協議に納得できない場合にとるべき対応について解説します。より納得のいく相続に近づけるために、この記事でしっかりと知識を身につけましょう。
納得できない遺産分割協議書には署名・押印しない
遺産分割協議を終えたら、その協議の内容をまとめた遺産分割協議書という書類を作成します。しかし、協議の内容に納得していない場合は、協議書に署名・押印をしてはいけません。仮に署名・押印をしてしまうと協議書が有効なものとなり、あとからやり直すのが困難となります。
協議書への署名・押印を拒否した場合、ほかの相続人から署名・押印するよう説得されることが多いです。また、場合によっては強引に署名・押印するよう迫られることもあります。しかし、署名・押印するかどうかは本人が自由に決められるため、納得できないときは断って問題ありません。
相続に納得できない場合に検討すべき3つの対応
相続や遺産分割の内容に納得できない場合は、以下のような対応を取るのがおすすめです。
1.法定相続分に基づく遺産分割案を提案する
2.遺産分割調停・審判を申し立てる
3.相続問題が得意な弁護士に任せる
ここでは、相続に納得できない場合に取るべき対応について説明します。
1.法定相続分に基づく遺産分割を提案する
遺産分割案が一部の相続人にとって有利になっている場合は納得ができないでしょう。そのような場合には、法定相続分に基づく遺産分割案を提案するのがおすすめです。法定相続分とは民法第900条に定められている、複数の相続人がいる場合のそれぞれの相続人の相続割合のことを指します。
たとえば、相続人が配偶者と子ども2人の場合、それぞれの相続分は配偶者が2分の1、子どもが4分の1ずつとなります。法定相続分に基づき遺産分割を行えば、不公平な相続・遺産分割を避けることが可能です。まずはご自身の相続人の構成に応じた法定相続分を確認してみましょう。
2.遺産分割調停・審判を申し立てる
法定相続分による遺産分割を目指そうとしても、話し合いが平行線をたどるケースもあります。そのような場合は、家庭裁判所に対して遺産分割調停を申し立てるのがおすすめです。仲介役である裁判官や調停委員が双方から意見を聞いたり、資料を確認したりして、解決案を提示してくれます。
また、調停でも話し合いがまとまらなければ、自動的に遺産分割審判に移行します。審判は調停と異なり、相続人の主張や提示された資料をもとに裁判官が遺産分割の内容を決める手続きです。即時抗告をされる場合もありますが、審判が出されたらそのとおりに遺産分割を行うことができます。
3.相続問題が得意な弁護士に任せる
遺産分割案に納得できていないのに、うまくそのことを伝えられない場合もあるでしょう。そのような場合は、弁護士に依頼し代理人として協議に参加してもらうのもおすすめです。弁護士は依頼者の利益が最大化するよう努めてくれるため、納得のいく結果につながる可能性が高まります。
その際、相続問題が得意な弁護士に任せるのが望ましいです。相続問題の解決実績が豊富な弁護士であれば、何がトラブルの原因なのかを見つけられ、その原因を踏まえた解決案を提示することができます。また、法的な根拠を示しながら交渉するため、冷静な話し合いになる可能性が高いでしょう。
遺産分割の話し合いが難航している場合は、当事務所に一度ご相談いただければと思います。相続問題に注力してきた弁護士が、依頼者様だけでなく、ほかの相続人の方にも納得していただけるよう遺産分割のサポートをいたします。まずは当事務所の無料相談をご利用いただけますと幸いです。
相続に納得できない主なケースとそれぞれの対処法
相続・遺産分割に納得できない場合の基本的な対応は前述のとおりです。しかし、細かな対処法は納得できない理由によって異なります。納得できない主なケースには、以下のようなものがあります。
1.遺産の評価方法に納得できない
2.相続人の一人が特別の援助を受けていた
3.被相続人の財産の維持・増加に貢献していた
4.遺言書で遺留分を侵害されていた
ここでは、相続に納得できないケースとそれぞれの対処法について紹介します。
1.遺産の評価方法に納得できないケース
遺産の評価方法は、相続できる財産に影響することがあります。特にめぼしい財産が不動産だけしかなく、誰か一人が不動産を相続しほかの相続人に代償金を支払う代償分割を行う場合には、評価方法によって代償金の額が変わるため不満につながりやすい傾向があります。
不動産の評価には、通常、路線価や固定資産税評価額が用いられることが多いです。しかし、これらは実勢価格(時価)よりも低いという特徴があります。そこでより正確に評価額を算定したい場合には、費用はかかってしまいますが、不動産鑑定士に鑑定を依頼するのがよいでしょう。
2.遺言書で遺留分を侵害されていたケース
特定の相続人だけが、生前、被相続人から援助を受けているケースもあります。たとえば、被相続人から婚姻、養子縁組、開業などのために援助を受けていたというものです。このような特別な援助は相続人間で不公平になることから、特別受益として扱われて相続分が調整されることになります。
ほかの相続人に対して特別な援助がある場合は、協議、調停、審判などの場で特別受益の持ち戻しを主張する必要があります。特別受益の持ち戻しが認められれば、特別受益者が受け取る財産は少なくなり、特別受益者以外の相続人が受け取る財産は多くなるでしょう。
3.相続人の一人が特別の援助を受けていたケース
生前、被相続人の事業に貢献したり、介護に注力したりしたというケースもあるでしょう。このような特別な働きをし、被相続人の財産の維持・増加に貢献した場合には、寄与分が認められる可能性があります。寄与分が認められれば、通常よりも多くの財産を相続することが可能です。
被相続人の財産の維持・増加に貢献している場合は、協議、調停、審判で寄与分を主張することになります。また、寄与分を主張する調停には、通常の遺産分割調停と寄与分を定める処分調停の2つがあり、具体的な寄与分の金額を決めるには寄与分を定める処分調停を申し立てる必要があります。
4.被相続人の財産の維持・増加に貢献していたケース
不公平な内容の遺言書が残されているケースもあるでしょう。遺言書がある場合は、遺産分割協議をせずに相続手続きを進めることが可能です。しかし、相続人全員が同意をすれば遺産分割協議を行うこともできるので、まずはほかの相続人に遺産分割協議をするよう相談してみましょう。
また、不公平な遺言書が残されていた場合は、遺留分侵害額請求を行う選択肢もあります。遺留分とは、遺言でも奪うことができない法定相続人に認められた最低限の相続分のことです。この遺留分を侵害されている場合は、侵害額に相当する金銭を交渉、調停、訴訟などで請求することができます。
遺産分割に納得できない場合は早めに弁護士に相談を
ほかの相続人から提示された遺産分割案に納得できない場合は、その遺産分割協議書に署名・押印をせずに法定相続分に基づいて遺産分割協議を行うよう交渉しましょう。また、自分だけで交渉するのが難しい場合は遺産分割調停を申し立てたり、弁護士に相談・依頼したりするのがおすすめです。
大野法律事務所では、遺産分割に納得できないという方のご相談にも応じています。相続問題が得意な弁護士が、トラブルの内容を丁寧に伺い、解決案なども提案させていただきます。相続問題は時間がたつと複雑になる場合もあるため、できる限り早く当事務所までご相談ください。