相続放棄は取り消せる?取消しが認められるケースと必要な手続き

何かしらの理由で家庭裁判所に受理された相続放棄を取り消したいと考える方もいるでしょう。相続放棄の取消しは、通常、認められるものではありません。しかし、一部のケースでは取消しが認められる可能性があります。この記事では、相続放棄を取り消せるケースと必要な手続きを説明します。

一度許可された相続放棄の取消しは難しい

相続放棄とは、家庭裁判所に相続放棄の申述をし、被相続人の財産の一切を引き継がないようにする手続きのことです。この相続放棄は、本人の自由意思に基づいて行われており、家庭裁判所という公的機関が許可を出しているため、原則として一度許可された相続放棄を取り消すことはできません。しかし、この手続きに何かしらの問題があった場合には、取消しが認められる可能性があります。

相続放棄の取消しができる可能性があるケース

以下のようなケースでは、相続放棄を取り消せる可能性があります。

  1. 制限行為能力者が相続放棄をした場合
  2. 錯誤、詐欺、強迫により相続放棄をした場合

ここでは、相続放棄を取り消せる可能性があるケースについて説明します。

1.制限行為能力者が相続放棄をした場合

制限行為能力者が単独で相続放棄をした場合は、その相続放棄を取り消せる可能性があります。制限行為能力者とは、以下のような行為能力に問題があり保護される人のことを指します。

  • 未成年者
  • 成年被後見人
  • 被保佐人
  • 被補助人

このような制限行為能力者が行った法律行為は、保護者が取消権を行使することができます(民法第919条第2項)。なお、この場合でも追認できる時期から6か月以内に行使しないとき、相続放棄があったときから10年を経過したときには、取消権を行使できなくなります(同条第3項)。

2.錯誤、詐欺、強迫により相続放棄をした場合

錯誤、詐欺、強迫によって本来とは異なる意思表示をした場合、その人は取消権を行使することができます。実際、過去には「見るべき資産がない」や「多額の借金がある」などと勘違い(錯誤)して行った相続放棄が、取り消されたケースもあります。ただし、取消しをする際にはこれらを立証する必要があり、簡単には認めてもらえないので注意が必要になるでしょう。

相続放棄の取消しをする際の流れ

相続放棄を取り消せる事情がある場合は、以下のような流れで手続きを行います。

  1. 必要書類を用意する
  2. 家庭裁判所に申述書などを提出する
  3. 家庭裁判所に受理されたら取り消される

ここでは、一度許可された相続放棄の取消しをする際の流れについて説明します。

1.必要書類を用意する

相続放棄の取消しをする場合は、まず以下のような書類を準備します。

  • 相続放棄取消申述書
  • 相続放棄をした人の戸籍謄本
  • 取消しをする必要がある証拠 など

なお、相続登記の取消しは一般的な手続きではないため、相続問題が得意な弁護士に相談・依頼するのが望ましいでしょう。弁護士であれば申述書の作成や証拠集めのサポートなどをしてくれます。早い段階で弁護士に相談し、相続登記の取消しに向けたサポートを受けるようにしてください。

2.家庭裁判所に申述書などを提出する

相続放棄の取下げに必要な書類を用意できたら、相続放棄の申述を行った家庭裁判所(通常は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所)に対して相続放棄取消申述書などを提出します。この手続きを行う際には収入印紙(1通あたり800円)と郵便切手が必要になります。

3.家庭裁判所に受理されたら取り消される

相続放棄取消申述書を提出すると、家庭裁判所で取消原因などに関する確認が行われます。具体的な手続きの内容は決まっていませんが、必要な証拠を提出したり、裁判所に出頭して事情を説明したりすることが多いです。そして、家庭裁判所に申述が受理されたら相続放棄は取り消され、その後は最初から相続放棄がなかったものとして扱われます。

相続放棄の取消しと似ている2つの制度

相続放棄の取消しと似ている制度に「取下げ」と「撤回」の2つがあります。ここでは、取下げと撤回の意味、取消しとの違いについて確認しましょう。

1.取下げ

取下げとは、家庭裁判所に相続放棄の受理をされる前に、申述者が当該申述の取りやめを求めることです。家事審判の申立ては、法律によって審判があるまでは、その全部または一部を取り下げることができると規定されています(家事事件手続法第82条第1項)。相続放棄の場合は申述から受理までに約1か月かかりますので、その期間中であれば取下げを行えます。

2.撤回

撤回とは、一度決まった相続放棄を取りやめることを指します。取消しに似ていますが、撤回は取消原因の有無に関係なく、その意思表示を将来に向かって消滅させるものです。なお、相続放棄の取消しは認められていますが、相続放棄の撤回はできません(民法919条第1項)。

相続放棄の取消しが必要なら弁護士に相談を

相続放棄の手続きに何かしらの問題があった場合は、一度許可された相続放棄の取消しができる可能性があります。しかし、相続放棄の取消しの手続きは複雑で難易度も高いため、相続人がひとりで行うのは難しいです。なるべく早く相続問題が得意な弁護士に相談・依頼をしましょう。

大野法律事務所でも、相続放棄に関するサポートにご対応しています。相続放棄の取消しも重要にはなりますが、そもそも相続放棄をするかどうか適切に判断し、決定することも重要でしょう。相続放棄に関する悩みや疑問などがありましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。

 

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