遺産相続の対象になる財産一覧!マイナスの財産や対象にならない財産に注意

遺産相続をするにあたり、被相続人の財産を全て調査する必要があります。仮に調査漏れがあった場合、遺産分割協議のやり直しが必要になったり、税務調査で指摘を受けたりします。

そこでこの記事では、遺産相続の対象になる財産をまとめて紹介します。また、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産や相続対象にならない財産についても確認しましょう。

遺産相続の対象になるプラスの財産の具体例

まずは、遺産相続の対象になるプラスの財産を紹介します。

1.現金・預金

現金は、財布やカバン、金庫・貸金庫などにあることが多いです。また、机、タンス、神棚、台所などにへそくりを隠している場合もあるので、故人の身の回りのものは全て調べましょう。

預金は、普通預金・定期預金を問わず相続財産となります。通常は、タンスや金庫などに通帳やキャッシュカードを置いていることが多いです。なお、近年は通帳やキャッシュカードがないネット銀行を利用している方もいます。郵便物やメールなども確認し、被相続人の預金を特定しましょう。

2.不動産(土地・建物)

被相続人が所有していた土地や建物も遺産相続の対象になります。一般的には、持ち家やその土地が対象になることが多いです。しかし、中には山林、農地、貸駐車場、貸アパートなどを所有しているケースもあります。権利証や納税通知書などを確認し、全ての不動産を漏れなく特定しましょう。

3.有価証券(株式・投資信託など)

株式、投資信託、公社債などの有価証券も相続財産となります。有価証券の有無や証券会社は、郵便物やメールなどから確認できます。また、証券保管振替機構(ほふり)に被相続人の証券口座の有無を確認し、その後、判明した証券会社に対して残高証明書を請求するという方法もあります。

4.動産(自動車、バイク、家具など)

被相続人が所有していた動産も遺産相続の対象になります。自動車やバイクをはじめ、家具・電化製品、宝石、宝飾品、ブランド品、腕時計、美術品、骨とう品、ペットなど、全てが相続財産として扱われます。ただし、仏壇・仏具などの祭祀財産は、相続財産になりません(民法第897条1項)。

5.各種権利

被相続人が所有している権利も相続財産となります。相続できる主な権利には、借家権、借地権、地上権、特許権、著作財産権、損害賠償請求権、ゴルフ会員権、電話加入権などがあります。このような権利に関する契約書や証券を見つけるようにしましょう。

遺産相続の対象になるマイナスの財産の具体例

相続人は、被相続人のプラスの財産だけでなく、マイナスの財産も相続する必要があります。ここでは、遺産相続の対象になるマイナスの財産を紹介します。

1.借金(ローン・クレジットカードなど)

被相続人が残した借金は、遺産相続の対象になります。被相続人の借金には、住宅ローンや教育ローンといった各種ローン、クレジットカードの未払い分、個人間での借入、貸与型の奨学金などがあります。契約書や利用明細などを調べて、借金の有無や金額をしっかりと確認するのが重要です。

2.滞納税金・滞納家賃

被相続人が、税金、保険料、家賃、水道光熱費、携帯料金・スマホ料金などを滞納しているケースもあります。このような滞納された負債も遺産相続の対象になります。一般的に滞納している場合は、債権者から督促されていることが多いです。郵便物や留守電などを確認しましょう。

3.保証債務・連帯保証債務

被相続人が、保証人や連帯保証人になっているケースもあります。このような保証人・連帯保証人の地位も相続の対象になります。一般的には、保証契約・連帯保証契約に関する契約書が残されていることが多いです。金融機関や不動産会社との契約書がある場合は特に注意するべきでしょう。

4.損害賠償債務

被相続人が生前、不法行為や債務不履行などをしていた場合、被害者に対して損害賠償債務を抱えている可能性があります。損害賠償債務は遺産相続の対象であり、相続人は被相続人に代わって賠償金を支払う義務を負います。示談書や和解書などがないか確認しておきましょう。

遺産相続の対象にならない財産の具体例

葬儀費用や死亡保険金など、被相続人の死亡をきっかけに生じる給付や費用もあります。しかし、これらは遺産相続の対象にはなりません。ここでは、遺産相続の対象にならない財産を紹介します。

1.葬儀費用

通夜・告別式・火葬などを行うために支払った葬儀費用は、一般的には喪主自身が負担するものと考えられています。この理由は、葬儀は喪主と葬儀会社が契約して執り行われるものだからです。ただし、実際は相続財産から支払われたり、相続人同士で負担しあったりするケースも多くあります。

2.死亡保険金

被相続人が生命保険に加入しており、配偶者や子どもが死亡保険金を受け取るケースもあります。死亡保険金は受取人固有の財産として扱われるため、遺産相続の対象にはなりません。ただし、受取人が被相続人自身になっている場合は、遺産相続の対象になるので注意しましょう。

3.遺族給付(遺族基礎年金・遺族厚生年金など)

生計を維持していた家族が亡くなった場合、残された遺族の方は遺族基礎年金や遺族厚生年金などを受け取ることができます。このような遺族給付金は、法律によって受給権者の範囲や順位などが規定されており、受取人固有の財産として扱われます。

4.相続財産から生じる利益(家賃・配当金など)

被相続人が貸アパートや株式を所有している場合、亡くなったあとも家賃や配当金が発生します。このような家賃や配当金は相続財産とはいえないため、遺産相続の対象にはならない決まりになっています。遺産分割協議が成立するまでは、各相続人が法定相続分に従って利益を取得します。

相続税の課税対象になるみなし相続財産に注意を

相続税の計算では、みなし相続財産に気を付ける必要があります。みなし相続財産とは、相続財産の対象にはならないけれど、相続税の課税対象になる財産のことです。たとえば、前述した死亡保険金や死亡退職金、死亡前に受け取っていた贈与などが、みなし相続財産の代表例といえるでしょう。

みなし相続財産がある場合は、相続税の課税対象に加算する必要があります。つまり「相続や遺贈により取得した財産価額+みなし相続財産により取得した財産価額」という計算式になります。民法上の相続財産と相続税法上の課税対象の範囲は異なるので注意しましょう。

相続財産の調査は弁護士に依頼するのがおすすめ

ご家族の方が亡くなった場合、その方が生前所有していた権利・義務の多くは遺産相続の対象となります。現金・預金、不動産、有価証券などのプラスの財産だけでなく、借金、連帯保証債務、損害賠償債務などのマイナスの財産も漏れなく調査し、相続の手続きを行うようにしましょう。

しかし、相続財産の調査には時間がかかることが多く、慣れていないと調査漏れが生じるリスクもあります。こうした負担やリスクを軽減するなら、弁護士に依頼するのがおすすめです。大野法律事務所には相続問題が得意な弁護士がいます。相続財産の調査をご希望でしたら当事務所までご相談ください。

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