遺産の使い込みで泣き寝入りしないために!今すぐできる対処法を解説

被相続人と同居していた相続人や親族に遺産を使い込まれていた場合、ほかの相続人は財産の返還を求めたり、使い込みを考慮して遺産分割を行ったりすることができます。この記事では、遺産の使い込みの概要や事例、使い込みが発覚した際の対処法、使い込みを解決する際の注意点などについて説明します。ほかの相続人による遺産の使い込みを疑っているなら、この記事を参考にしてください。

遺産の使い込みとは?

遺産の使い込みとは、相続の前後で一部の相続人が勝手に相続財産を処分してしまうことを指します。本来、被相続人が存命中は、その財産は被相続人のものです。また、死後は一度、相続人全員の共有財産となり、それから遺産分割手続きを通じて個々の財産となります。こうしたルールがあるにもかかわらず、被相続人の財産を勝手に処分する行為を一般的には遺産の使い込みといいます。

よくある遺産の使い込み事例3選

遺産の使い込みには、以下のような事例があります。

  1. 預貯金の引き出し
  2. 不動産の無断売却
  3. 生命保険の解約返戻金の着服

ここでは、よくある遺産の使い込み事例について説明します。

1.預貯金の引き出し

正当な理由がないにもかかわらず被相続人の預貯金を引き出す行為は、遺産の使い込みの典型例といえるでしょう。特に、被相続人と相続人が同居しているようなケースでは、相続人が通帳、印鑑、キャッシュカードなどの場所を知っていることが多く、預貯金を使い込まれる可能性が高いです。

なお、民法改正に伴い2019年7月1日より、遺産分割協議が成立する前に単独で預貯金を払い戻せる制度が始まりました(民法第909条の2)。払い戻しの可能額は「相続開始時の預金額×1/3×当該相続人の法定相続分」です。この制度による引き出しは、預貯金の使い込みには該当しません。

2.不動産の無断売却

不動産など、価値ある財産を勝手に売却してしまうという使い込みもあります。本来、不動産は移転登記をしなければ売却できませんが、委任状を作成したり、印鑑を持ち出したりして、無断で売却される可能性もあります。こうした不動産の無断売却も遺産の使い込みの一例といえるでしょう。

3.生命保険の解約返戻金の着服

被相続人が契約していた生命保険を解約し、解約返戻金を着服するという使い込みもあります。死亡保険金は、受取人固有の財産です。一方、解約返戻金は、被相続人の財産に含まれます。それにもかかわらず解約返戻金を自分のものにしてしまうことは、遺産の使い込みのひとつといえるでしょう。

遺産の使い込みが発覚した際にできる3つの対処法

遺産の使い込みが発覚した際には、以下のような対応を検討しましょう。

  1. 相手方に返還するよう求める
  2. 訴訟などを通じて返還を求める
  3. 使い込みを考慮した遺産分割を行う

ここでは、遺産の使い込みが発覚した際にほかの相続人ができる対処法を説明します。

1.相手方に返還するよう求める

まずは遺産の使い込みをした相手方に直接、財産を返還するよう求めましょう。一般的には内容証明郵便で返還を求めることが多く、その後の話し合いがまとまれば合意書を作成し、財産を返還してもらうという流れになります。相続人が使い込んでいる場合は法定相続分に従って返還してもらい、相続人以外の人が相続財産を使い込んでいる場合は財産の全額を返還してもらうことになるでしょう。

2.訴訟などを通じて返還を求める

当事者同士の話し合いがまとまらない場合は、民事調停や通常訴訟などの裁判手続を検討する必要があります。民事調停とは、裁判官と調停委員が仲介役となり、話し合いによる解決を目指す手段のことです。一方、通常訴訟は裁判所に訴えを起こし、判決による解決を目指す手段のことです。このような裁判手続を通じて、使い込まれた財産の返還を求めることになるでしょう。

3.使い込みを考慮した遺産分割を行う

民法改正に伴い2019年7月1日より、相続人は使い込まれた財産を考慮して遺産分割が行えるようになりました(民法第906条の2)。そのため、仮に財産が処分されてその返還を求めるのが難しいようなケースでも、遺産分割協議の際に調整を図ることで解決を目指すことができます。

遺産の使い込みを解決するのが難しい3つの理由

遺産の使い込みは、以下のような理由から解決するのが難しいといわれます。

  1. 証拠を確保するのが難しいから
  2. 財産を使い切っていることが多いから
  3. 時効が成立してしまう可能性があるから

ここでは、遺産の使い込みを解決するのが難しい理由と注意点について説明します。

1.証拠を確保するのが難しいから

遺産の返還を求める際には、遺産が使い込まれた証拠を確保する必要があります。しかし、タンス預金の着服のように、立証するのが困難なケースも多くあります。また、金融機関から取引明細書を取り寄せて読み解くなど、時間がかかるケースもあるでしょう。このような理由から証拠を集めきれず、十分な主張をできないために、相手方から返還してもらえないことも多いです。

2.財産を使い切っていることが多いから

財産を使い切っている場合、その財産を取り戻すのが非常に難しくなります。調停や訴訟などで財産の返還が認められたとしても、踏み倒される可能性が高くなります。また、強制執行で回収しようとしても、回収できる財産がない場合は空振りとなってしまう可能性が高いでしょう。

3.時効が成立してしまう可能性があるから

遺産の使い込みに対して行使できる不当利得返還請求権には、消滅時効が存在します。時効は「権利を行使できることを知ったときから5年間行使しないとき」、「権利を行使できるときから10年間行使しないとき」に成立します(民法第166条第1項)。使い込みの発覚やその証拠集めに時間がかかった場合は、相続財産の返還を求める権利を失ってしまう可能性があるでしょう。

遺産の使い込みを疑ったら早めに弁護士に相談を

遺産の使い込みとは、相続人などが正当な理由や権利がないのにかかわらず、被相続人の財産を使う行為を指します。その使い込まれた財産は当然、返還を求めることが可能です。しかし、証拠を集めにくいなど、使い込みを解決するのは難しいということは理解しておきましょう。

ほかの相続人や親族が遺産の使い込みをしている可能性があるなら、なるべく早く弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。弁護士であれば使い込みの調査から相手方との交渉まで一貫して対応してくれます。遺産の使い込みを疑ったら、まずは大野法律事務所までご相談ください。

※電話相談、オンライン相談も可能です(日時のご予約が必要です。)お気軽にお問い合わせください。