相続財産調査とは?預貯金、不動産、株式、借金などの調べ方を紹介

遺言書を作ったり、遺産分割協議を行ったりするにあたって、被相続人の財産を把握するための相続財産調査を行う必要があります。しかし、何の財産をどのように調べればよいのかわからない方もいるでしょう。そこでこの記事では、相続財産調査の必要性や調査すべき相続財産などについて説明します。

相続財産調査とは?

相続財産調査とは、被相続人が所有する財産を調査・評価し、財産目録としてまとめる手続きのことを指します。相続財産調査の対象となる財産は、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産(借金など)も全てとなります。被相続人が遺言書を作成したり、相続人が遺産分割協議をしたりする際の重要な資料となるため、抜け・漏れなく全ての財産をしっかりと調査する必要があります。

相続財産調査の必要性

相続財産調査は、遺言者(被相続人)が遺言書を作成する際にも、相続人が遺産分割協議をする際にも必要になります。ここでは、相続財産調査の必要性について説明します。

遺言者が財産調査をする場合

遺言者(被相続人)が財産調査をすべき主な理由は、以下のとおりです。

  • 遺言書に自身の最後の意思表示をしっかりと反映させるため
  • 相続人が円滑に相続手続きをできるようにするため

遺言者は自身の財産を全て把握し、その分配方法を遺言書に記載することで、自身の最後の意思をしっかりと反映させることができます。また、自身の財産を漏れなく遺言書に記載できていれば、自身が亡くなった際に相続人たちが円滑に相続を行えるようにもなるでしょう。

相続人が相続財産調査をする場合

相続人が相続財産調査をすべき主な理由は、以下のとおりです。

  • 単純承認、限定承認、相続放棄の判断をするため
  • 遺産分割協議において公平な相続を実現するため
  • 漏れなく相続財産を調査し、やり直しをしないため

被相続人が遺言書を残していない場合は、相続人は相続財産調査をする必要があります。相続財産調査をしてプラスの財産とマイナスの財産を把握することで、相続をするか、相続放棄をするかを判断できるようになります。また、正確に財産を調査・評価できれば公平な相続を実現できるでしょう。

代表的な相続財産とそれぞれの調査方法・評価方法

相続財産調査では、以下のような財産の有無を確認し評価しましょう。

  1. 預貯金
  2. 不動産
  3. 株式・投資信託
  4. 生命保険
  5. 借金

ここでは、代表的な相続財産とそれぞれの調査方法・評価方法について説明します。

1.預貯金

預貯金を調査する際は、まず被相続人の所有しているキャッシュカード、預金通帳、郵便物などを探して、利用している金融機関を特定しましょう。その後、特定した金融機関に対して残高証明書の発行を依頼します。預貯金の場合は、残高証明書に記載されている残高がそのまま遺産額となります。

2.不動産

不動産を調査する際は、まず固定資産税課税証明書を探しましょう。また、固定資産税課税証明書が見つからない場合は、市区町村の役所で固定資産評価証明書を取得するとよいでしょう。これらの資料を見ることで、被相続人が不動産を所有しているかどうか判断することができます。

遺産分割協議において不動産は、基本的には時価(実勢価格)で評価することが多いです。また、公示地価、相続税評価額、固定資産税評価額などを採用する場合もあります。なお、相続税申告の際には土地は路線価方式または倍率方式、建物は固定資産税評価額で評価するのが基本となります。

3.株式・投資信託

株式・投資信託を調査する際は、まず証券会社を特定する必要があります。通常は、取引報告書や配当金の有無などで確認できます。また、証券保管振替機構(ほふり)の「開示請求」を利用するという方法もあります。そして、特定した証券会社に対して、残高証明書の発行を依頼します。なお、金融商品の評価方法は複雑ですので、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

4.生命保険

死亡保険金は受取人固有の財産になりますが、相続税申告で必要になるため調べておきましょう。生命保険(死亡保険金)は、保険証券や郵便物などを探したり、一般社団法人生命保険協会の「生命保険契約照会制度」を利用したりすることで調査できます。死亡保険金の場合は、受け取った保険金額がそのまま財産として評価されます。

5.借金

相続をする際は、必ず借金・滞納金・保証債務などの有無を調査しましょう。借金の調査では、まず金銭消費貸借契約書やクレジットカードなどの有無を確認します。また、JICC、CIC、KSCのような信用情報機関に開示請求をして、借金の有無を調べることも可能です。なお、住宅ローンが残っている場合は、団体信用生命保険(団信)で完済できる可能性があるでしょう。

相続財産調査を自力で行う場合のデメリット

相続財産調査は自分で行うことも可能ですが、以下のようなデメリットがあるので注意が必要です。

  1. 調査に多くの時間・労力がかかる
  2. 財産の抜け漏れが生じることが多い

ここでは、相続財産調査を自力で行う場合のデメリットについて説明します。

1.調査に多くの時間・労力がかかる

相続財産調査には、多くの時間と労力がかかります。相続財産の調査範囲は広く、またひとつの財産についてもさまざまな窓口に問い合わせて調べる必要があります。そのため、仕事や家事などをしている場合は、この相続財産調査が大きな負担となってしまいます。そして、調査に時間がかかると相続放棄・限定承認の申述や、相続税の申告に間に合わなくなる可能性があるので注意が必要です。

2.財産の抜け漏れが生じることが多い

相続をするにあたって、預貯金、不動産、金融商品、借金など、さまざまな財産・負債を調査しなければなりません。しかし、調査する項目が多いため、財産の抜け漏れが生じるリスクがあります。財産の抜け漏れがあった場合、その財産に関して新たに遺産分割協議を行う手間が生じるでしょう。

相続財産調査は相続問題が得意な弁護士に相談を

相続財産調査とは、被相続人が所有している資産・負債を調査し評価する手続きのことです。この相続財産調査が不十分な場合は、将来的に相続トラブルに発展するリスクがあるため注意が必要になります。預貯金、不動産、株式、借金などの有無を確認し、それぞれ正しく評価をしましょう。

相続財産調査は、遺言者や相続人が行うことも可能です。しかし、時間や労力がかかり、抜け漏れのリスクもある点には注意しなければなりません。確実に相続財産調査をしたいなら、弁護士に調査を依頼するのもおすすめです。大野法律事務所でもご対応できますので、お気軽にご相談ください。

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