被相続人の生前、相続人の一人に不動産が贈与されていた事例
亡くなられた方 | 母親 |
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相続人 | 長男、次男、三男 |
相続(遺産) | 土地、預貯金 |
ご依頼の背景
依頼者の母親が死亡し、長男から依頼者自宅に遺産分割協議書が送られてきた。その遺産分割協議書には、土地1筆と預貯金3,000万円を三等分にするとの内容が記載されていた。依頼者は、母親は生前土地を2筆所有していると認識していたため、母親の相続財産に誤りがあるものと考え、対象となる土地2筆の登記事項証明書を確認した。その結果、土地1筆(本件土地)については、長男が母親より贈与を受けていたことが判明した。依頼者としては、母親から長男に対する本件土地の生前贈与に納得がいかないとして、当事務所弁護士に相談するに至った。
依頼人の主張
依頼者としては、母親から長男に贈与された本件土地を相続財産に戻し、遺産分割協議の対象とするべきであると主張した。
サポートの流れ
弁護士は、長男に対し、不動産の生前贈与は特別受益にあたるとして、本件土地についても母親の遺産に含まれると主張した。一方、長男は、母親から本土地について相続財産としなくてよい旨伝えられていた(いわゆる持ち戻し免除の意思表示)と主張し、兄弟間で本土地を相続財産に含めるかという点に争いが生じた。もっとも、長男側には、持ち戻し免除の意思表示が示されている書面は存在せず、あくまで母親より口頭でその旨伝えられたとのことであったため、こちらとしては全面的に争う姿勢のもと、調停・審判を視野に入れることとなった。
結果
長男側との交渉は平行線を辿ったため、調停申立ての準備に入り、その旨長男側に伝えた。その結果、長男は、本件土地の生前贈与は特別受益であり、かつ、母親からの持ち戻し免除の意思表示がなかったものとして本件土地を相続財産の対象とすることに合意した。最終的には、協議により遺産分割協議書の作成まで終えることができた。本件の遺産分割協議のポイントとしては、特別受益における持ち戻し免除の意思表示が口頭によるものであったり、黙示によるものである場合には、その意思表示は認められない旨を積極的に主張し、論述を展開させていった点にあると考える。